basyura's blog

あしたになったらほんきだす。

あの日、松の廊下で

忠臣蔵をまともに見たことが無いので、"権力側のおえらいさんにいじめられた武士が切りつけた結果、武士が切腹させたのでその部下がお返しに討ち入った" ぐらいの知識だった。じゃあ、なんでいじめたのか、切りつけざるをえなかったのかといったバックグラウンドを全く知らない。おえらいさんが悪で、部下たちの美談なんだろ程度。実際のところ本当の理由は今となっては分からなくて、だからこそ創作によって話を含ませたりだなんだができるからエンターテインメントとして人気がある作品なんだろうな。

ただ、非常にありえる話だなと。吉良と浅野と梶川とその周りの関係。自分の周りでも程度の差はあれ日常茶飯事的に起きてるよなぁと。それぞれがそれぞれに考えがあって進めているとはいえ、「そういう言い方はないだろ」とか「もうちょっとやる気を出させる言い方を嘘でもしろよ」とか。ちょっとしたすれ違い。ある程度は仕方ないと思うけど、いざというときに頑張れるか頑張れないか、手伝うかスルーするかはそういうところに出てくるよなと。

義経じゃないほうの源平合戦 (文芸社文庫) に続いて本作も楽しく読めた。元々、僕が本をいろいろ読み始めたのきっかけは万城目学の 鹿男あをによし (幻冬舎文庫) で "本を読むの楽しいな" と感じたからなんだけど、その時の感覚にすごく似てる。なつかしい。

義経じゃないほうの源平合戦

  • はじめに
  • 登場人物
  • 一、挙兵
  • 二、旭将軍
  • 三、義仲追討
  • 四、宇治川の戦い
  • 五、一ノ谷の戦い
  • 六、三日平氏の乱
  • 七、葦屋浦の戦い
  • 八、屋島の戦い
  • 九、壇ノ浦の戦い
  • 十、造反
  • 十一、義経じゃないほうの造反

読みやすく、面白く、どんどん読み進んでしまう魅力あり。ページをめくることに没頭したのは久しぶりだった。

特に、あまり知られていない登場人物である範頼の存在が新鮮で、その掘り下げられた描写は興味深い。範頼は頼朝と義経の間で振り回されながらも平家討伐の総大将を務めるコツコツタイプの人物として描かれ、それが本書の魅力を引き立てている。

また、改めて平家との戦いの流れを知ることができた。義経が壇ノ浦で活躍したぐらいの認識から、範頼の王道ルートと義経の奇襲ルートといった瀬戸内海を挟んだ戦略を知れた。

創作が織り交ぜられつつも、読者自身が範頼について調べて考えることを促す意図も面白い。

別作品も読みたい。